航空券の新流通規格NDC、広がる取り組み、ANAとJALでの進ちょくと、そのメリットを聞いてきた

国際航空運送協会(IATA)が推進する航空券の新流通規格NDC。リーダーボード航空会社22社の全流通のうち、2020年末までに少なくとも20%をNDC経由の流通にするという目標を掲げていた。コロナ禍で航空業界が未曾有の打撃を受けているなか、NDCは現在どこまで進んでいるのか。NDCアグリゲーターのバーテイルジャパンが開催した「旅行業界向けNDCシンポジウム2021」では、NDCの進捗状況が説明されほか、ANAとJALがそれぞれの取り組みを紹介した。

コロナ禍でも広がるNDCの取り組み

バーテイルジャパン代表取締役の上甲哲也氏は、「NDCによって、航空会社からこれまてにない商品とサービスが提供される。同時に、旅行会社の業務プロセスのデジタル化にも貢献する」と話したうえで、「NDCはもはや遠い未来のものではない」とし、旅行業界に向けてNDCの理解と普及の必要性を強調した。

NDCによって、航空会社が自社ウェブサイトで直販しているコンテンツを、NDC経由で旅行会社でも間接販売できるようになる。座席やアンシラリー(付帯サービス)など航空商材をバンドルし(組み合わせ)、データに基づいてパーソナライズされた商品を顧客に提案。さらに将来的には航空以外の旅行商材もバンドルすることもできるようになるなど、「旅行サプライチェーンを進化させるもの」(上甲氏)だ。

また、NDCは座席やアンシラリーのリッチコンテンツ化を実現。旅行会社は、航空会社の直販と同様に画像や動画などでより詳細で具体的なコンテンツで商品を販売できるようになる。

現在、航空会社と旅行会社とのダイレクト接続に加えて、既存のGDSやバーテイルのようなアグリゲーターが両者をつなげるNDCの仕組みを構築ししているところ。バーテイルによると、アンシラリーの販売が可能になるレベル3認証を取得している航空会社の日本発座席シェアは現在は64%、予約変更やキャンセルが可能になるレベル4認証では40%(NDCによる販売座席数ではない)になるなど、世界の航空会社は着々とNDCへの準備を進めている。

IATAアジア太平洋アシスタントディレクターのウィニー・ヨン氏によると、コロナ禍でもNDCの取り組みは進んでおり、2020年にNDC認証を受けた企業は前年比19%増となり、現在のところ189社にのぼっているという。航空会社では新たに11社が認証された。

バーテイルジャパン上甲氏ANA、NDCで顧客体験向上による差別化

ANAマーケティング室マーケティング企画部流通政策チームマネージャーの中井正浩氏は、ANAのNDCの取り組みを説明。2020年3月にはNDCプラットフォームを自社開発し、スカイスキャナーとの「ダイレクトブッキング」を開始。また、9月には「Googleフライト」でのサービスを開始した。今後、レベル4を取得し、プラットフォームをさらにアップグレードする計画だ。

中井氏は、「航空運賃のコモディティ化が進むなか、顧客に選ばれるためには、感動という心理的・感情的な評価による差別化が必要」と指摘。顧客の感動体験を創出するうえで、さまざまな商材をバンドルし、パーソナライズされた提案ができるNDCは重要な流通になるとの考えを示した。

また、直販にはないメリットとして、「他社商品と比較ができるとともに、他社商品と組み合わせることも可能で、独自のプラスαの価値を提供し、差別化を図ることができる」ことを挙げた。

一方で、NDCはGDSコストを負担と見なす航空会社主導で進められており、旅行会社にとってGDSにはまだ魅力的な点が多いことから、旅行会社のあいだでNDCが進まないと指摘。しかし、中井氏は「eチケット化には15年かかったが、テクノロジーの進歩は早く、NDCの普及ももっと早くなるだろう。NDCはあくまでも規格だが、提供できるサービスは無限大になる」と今後の展開に期待感を表した。

さらに、さまざまなパーソナライズ提案が可能なNDCは、ニューノーマルでの新しい顧客ニーズに応えるものとし、「コロナ禍でNDCの取り組みはスローダウンしたが、新たな価値を創造していくうえで、NDCは欠かせない」との考えを示した。

ANA中井氏JAL、デジタル領域で顧客との『つながり』を深化

JAL企画部ディストリビューション戦略グループ・アシスタント・マネージャーの大山雄輝氏は、ポストコロナのキーワードしとして、デジタル、オンライン、個の時代の3つを挙げ、そのなかで、キャッシュレス、サブスクリプション、電子署名、ライブeコマースなどさまざまなサービスが登場し、デジタルトランスフォーメーション(DX)が加速すると指摘。そのうえで、「(NDCは)デジタル領域で顧客との『つながり』を深化させる技術」と定義した。

従来のEdifact通信でも、個別に開発を行えば、直販コンテンツの提供は可能だが、NDCはそれを容易にできると説明。航空会社のコンテンツやサービス、航空会社の予約機能などを旅行会社に直接提供できるところが最大のメリットとした。

今後、航空券や旅行商品の販売は、多様化する顧客ニーズと販売方法に合わせてさらに複雑化するとし、「その対応の一手がNDC」と強調。JALは、PSS(パッセンジャー・サービス・システム)基幹システムの刷新が遅れ、NDCでは後発になるが、今後は取り組みを加速させていく考えを示した。

JAL大山氏バーテイル、VDCは社内の業務効率化にも貢献

バーテイルは、NDCアグリゲーターとして、ウェブアプリケーションの「バーテイル・ダイレクト・コネクト(VDC)」を提供している。フルサービスキャリアのNDCに加えて、GDS、LCC、非航空商材などさまざまなチャネルをAPI連携で統合する。

ホールセラー、サブエージェント向けのコンソリデータモデルの英語版を4月に、続いて日本語版を6月にリリースする予定だ。これにより、IATA公認代理店でない旅行会社もVDC上でホールセラーのIATAに切り替えて、予約・発券依頼を行うことができるようになる。また、2021年中にはスマートフォン向けアプリもリリースする予定だ。

また、VDCの強みは、RPA(ロボットによるプロセス自動化)による旅行会社のバックオフィスシステムとのデータ連携自動化。バーテイルジャパン・セールス&マーケティング・マネージャーの石井宏明氏は、「大掛かりなシステムを構築する必要はなく、NDCへの取り組みと社内業務効率化を並行して行える」と、そのメリットを強調した。

さらに、「一度のレスポンスに濃い情報が含まれるため、フライト検索のレスポンスタイムだけで既存のGDSとNDCとの優劣はつけられない」としたうえで、NDCのレスポンスは遅いとの懸念に対して、「キャッシュやストリーミングによって解決することが可能」と説明した。

このほか、石井氏は、旅行会社が抱えている懸念に回答。インターラインについては、世界一周など複雑な旅程の発券はできないが、通常のインターラインの取り扱いは可能だとし、グループ予約については、サポートしている航空会社もあると説明した。

VDCで日本発FIT 旅客の手配可能な航空会社は現在のところ全体の15.2%(VDCに接続される航空会社が日本でNDCの運用を開始する前提として)。6ヶ月後には24.9%、2021年末には32.7%に拡大する見込みだ。

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