フライトキャンセル、鉄道の遅延、燃料費の高騰など、逆風はあっても、人々は旅行を予約し、出かけている。だがその手法や行き先には、パンデミック前との変化が見られる。
ヨーロッパ各地では2022年の夏、パンデミックに伴う規制の撤廃により、交通機関の予約数が回復したが、旅行者の行動には、注目するべき変化がいくつもあるようだ――。陸上交通プラットフォーム、Omio(オミオ)では、こうした最新状況に関するレポートを発表した。
「EUモビリティ・レポート:2022年夏の旅行トレンド」と題した同社報告書では、2019年以降、旅行の行動にどのような変化が起きているのか、さらに検索トレンドから予想される今後数か月の傾向について考察している。
同レポートによると、陸上交通の運賃価格に大きな変化はない。旅行者が鉄道サービスに支払った金額は2019年比で3%減、同様にバスは1%減。だが航空機の利用コストは3割以上の増加となった。
これに対し、陸上交通を予約した人の比率は2019年よりも増えており、鉄道は7%増、バスは5%増。だがフライト予約では55%以上の減少となり、よりサステナブルな旅行手段への移行が進んでいる可能性を示唆している。
また、間際予約の傾向も強くなっているようだ。パンデミック以降、旅行当日の予約件数が増加しており、この傾向は今も続いている。なお、予約のタイミングで最も多かったのは、1週間前。
旅行当日の予約件数は、2019年比で2倍以上の165%増だったのに対し、31日前の予約件数は50%減となった。
もう一つの傾向は、近距離(400キロ未満)の旅行を選ぶ人が増えていることだ。800キロ以上の長距離旅行は47%減だったが、国内旅行やステイケーションは14%増。国境を超える旅行は31%減だった。
9~10月のデータを見ると、欧州ではこの冬、自宅近くの旅行を計画している人が多い。例えばドイツの旅行者はフランス、オランダ、オーストリアへの旅行を検索。英国では、フランス、オランダ、アイルランド、ベルギーを検索している旅行者が多いといった具合だ。
変容するモビリティ
フォーカスライトがまとめた調査レポート「旅行スタートアップの現状2022」からも、似たような結果が明らかになった。鉄道、レンタカー、配車サービスなどの業種は、今夏、業績が回復したが、その背景には、空路での旅への不満がある。
投資家からの注目も高い。同レポートによると、2012年から2022年5月までの間に配車サービス系スタートアップが獲得した資金は73億ドル(約1.1兆円)。また都市向けの交通サービス、例えば自動運転テクノロジーや電動垂直離着陸機(eVTOL)、その他の様々な公共交通サービスが同時期に得た資金は55億ドル(約8085億円)だった。
その内訳をみると、バイクやスクーターを使った事業には、過去10年間で44億ドル(約6478億円)以上の投資があった。そのほか、レンタカーでは16億ドル(約2352億円)、タクシー配車では9億9800万ドル(約1467億円)。バスは4億6200万ドル(約679億円)、鉄道は3400万ドル(約50億円)など。
こうしたなか、9月にはグーグルが旅行ツールを刷新し、気候変動問題に対応した交通手段をユーザーが見つけやすく、選びやすい仕様へと改良した。
また初の試みとして、ドイツ、スペイン、イタリア、日本については、グーグル・サーチから直接、鉄道を予約できるようになる。
グーグルではドイツ国営のドイチェ・バーンと直接、提携。さらに英国のアグリゲーター、Travelfusion経由で、スペイン国鉄Renfe、イタリア旧国鉄Trenitaliaと民間高速鉄道Italo、日本のJRの運行スケジュールや運賃データを入手し、予約できる体制を整えた。
検索サービスにおいて圧倒的な存在である同社だが、さらに多くの鉄道会社やアグリゲーター、第三者である予約サイトとの連携を進めることで、カバーできる領域を拡大する計画だ。バスのチケットについても、同様の取り組みを近く開始するようだ。
※ドル円換算は1ドル147円でトラベルボイス編集部が算出
※この記事は、世界的な旅行調査フォーカスライト社が運営する「フォーカスワイヤ(PhocusWire)」から届いた英文記事を、同社との提携に基づいて、トラベルボイス編集部が日本語翻訳・編集したものです。
オリジナル記事:WHAT MOBILITY BOOKING DATA REVEALS ABOUT TRAVELER BEHAVIOR
著者:ジル・メンゼ氏