森記念財団都市戦略研究所は、「世界の都市総合力ランキング(Global Power City Index, GPCI)」の2022年版をまとめた。2008年から調査を行なっているが、新型コロナウイルスの拡大から約3年となる今年の調査では、各都市におけるコロナ政策の違いが明確に調査結果に表れ、各都市のスコアに大きな変動がみられた。
1位ロンドン、2位ニューヨーク、3位東京、4位パリ、5位シンガポールのトップ5都市の順位に変化はないものの、コロナ禍に対する各都市の対応の違いが強く影響し、スコアは大きく変動。2021年と比較すると、ロンドンのスコアが下落した一方、ニューヨークのスコアは上昇。東京とパリのスコアの差は縮まり、拮抗する結果となった。日本の都市では、大阪が37位、福岡が42位。
今回の調査では、外国人観光客の受入再開状況や航空便の運航本数の回復度合いが、「文化・交流」と「交通・アクセス」のスコアに明確に表れた一方で、「居住」や「環境」のスコアを伸ばした都市も見られた。
ロンドン、東京、シンガホール、香港(総合23位)は、コロナ禍前までは「文化・交流」の「外国人訪問者数」、「交通・アクセス」の「国内・国際線旅客数」などが強みだったが、国際渡航規制や慎重な水際対策が影響し、全体的にスコアを下げる結果となった。
一方、コロナ禍で最も早く観光客の受入を再開させた都市のひとつであるドバイ(総合11位)は、「文化・交流」では東京を抜き4位に上昇し、「観光地の充実度」「買物の魅力」「食事の魅力」でスコアを伸ばした。
ニューヨークと上海(10位)は、国内便の回復が他の都市より早かったことで、「交通・アクセス」において高い順位を維持。またニューヨークでは、昨年悪化した就業環境に関わる指標「完全失業率の低さ」や「働き方の柔軟性」が改善され、「居住」の順位が上昇した。
居住者の暮らしやすさでは、パリとメルボルン(総合9位)が「居住」や「環境」の指標が上昇。「物価水準の低さ」や「1人あたりの総労働時間の短さ」など、生活コストや就業環境面の評価が高まった。
東京に対する評価の変化は
東京について2018年と2022年を比較すると、「従業者数」や「ホテル客室数」はこの5年間で着実にスコアを伸ばしている一方、「世界トップ500企業」「研究者数」「研究開発費」などはこの5年間でスコアが下落。また、東京の弱みだった「リサイクル率」などが改善する一方で、「緑地の充実度」などはさらにスコアが下落した。
今後については、コロナ禍を経て、「外国人訪問者数」や、訪問者数増減の影響を受けやすい「買物の魅力」「食事の魅力」などは大幅に回復し、2030年までに控える複数の都市再開発などを通じて、「飲食店舗の多さ」「緑地の充実度」「外国人居住者数」などのスコアも伸長する可能性が高いとしている。
このほか、調査対象である48都市に滞在経験のある人に対して、「その都市で働きたいと思うか」についてアンケート調査(2022年8月に実施)をしたところ、最も評価が高かったのはニューヨークで、東京は2番目に評価の高い都市となった。東京は、特にアジア諸都市に居住している回答者から「働きたい」との回答割合が極めて高くなった。
総合トップ20都市は以下の通り
- ロンドン
- ニューヨーク
- 東京
- パリ
- シンガポール
- アムステルダム
- ソウル
- ベルリン
- メルボルン
- 上海
- ドバイ
- マドリード
- シドニー
- コペンハーゲン
- ウィーン
- ロサンゼルス
- 北京
- チューリッヒ
- ストックホルム
- バルセロナ