法人旅行も急回復のフェーズに、希望する航空・ホテル・会議場が抑えられないケースも、2023年の展望をキーパーソンに聞いてきた

日本旅行・グローバルビジネストラベル(GBT NTA)はこのほど、業務渡航およびミーティング&イベント市場の最新状況を紹介するイベントを都内で開催した。来日したアメリカンエキスプレス・グローバルビジネストラベル(GBT)のアジア太平洋地区副社長兼ジェネラルマネジャー、ジョアン・サリー氏およびGBTアジア太平洋地区ミーティング&イベント担当シニアディレクター、パトリック・ラッシュ氏が、2023年のマーケット展望や持続可能な業務渡航をサポートする取り組みについて語った。

対面ミーティングが増加

GBTによると、アジア太平洋では、欧米に比べて、まだ渡航規制などパンデミックの影響が一部残ってはいるものの、2022年下期以降、ビジネストラベルは着実に回復基調に転じている。特に対面でのミーティングへの要望が急増中だという。

世界の業務渡航消費額が2019年の14億ドル(約1900億円)を上回るのは2026年(グローバル・ビジネス・トラベル協会)との予測がある一方、コロナ禍での供給縮小などが影響し、目下の需給関係は、需要が急回復のフェーズに。希望する航空便やホテル、会議場が抑えられないケースもでてきている。こうした状況は、2023年も続くと同社では予測している。

リモートワークとオフィス勤務を両方、取り入れたハイブリッド型勤務が定着したことで、以前とは異なるニーズも顕著になっている。その一つが、対面で行う社内ミーティングの増加だ。「アジア太平洋地区では、多くの企業がフレキシブルな勤務体系を継続しているため、社員をリコネクトする場、チームが一堂に会する場が必要になっている」とサリー氏は話す。

なかでも日本市場で目立つのは、10人以下と規模の小さい対面ミーティングの取り扱いが急速に伸びている点で、他のマーケットと比べても特出しているとサリー氏は指摘。「社内でのチームミーティングの取り扱いは、来年も増加すると見込んでいる。クライアント企業がこうした会合に充てる予算も高くなっている」(同氏)。

GBTが世界23カ国のミーティング&イベント関係者500人以上を対象に実施している年次調査の最新版「2023年グローバル会議イベント予測(Global Meetings and Events Forecast)」でも、アジア太平洋地区における対面の社内ミーティング予算(一人当たり)は他地域より高く711ドル。これに対し、欧米は554ドル、南米は662ドルだった。

ラッシュ氏は「全般的にパンデミック前より、社内ミーティングの重要性が高くなっていることは確実だ。リモートワークの中で、社員のエンゲージメント、社員教育、企業カルチャーの継承が課題として急浮上しており、社内ミーティングを強化する動きになっている」と付け加えた。

なお、2021年9月~2022年8月にGBTが受注した会議イベント売上によると、アジア太平洋地区でトップの開催都市は東京、次いで2位が大阪となった。3位は豪州シドニー。以下、ソウル、台北と続く。例年であれば、シンガポールや中国の都市が上位に入るが、コロナ規制などが影響したと同社では分析している。

GBTアジア太平洋地区副社長兼ジェネラルマネジャー、ジョアン・サリー氏

サステナブルな燃料での出張を実現

もっとも、コロナ禍に端を発した様々な混乱は、まだ完全に落ち着いたわけではない。フライトキャンセルや、PCR検査で陽性になり、予定変更を余儀なくされた場合の対応など、出張者へのケアでは、以前より手厚い対応が必要になっている。「クライアント企業からは、トラベルマネジャーを介さず直接、出張者とコミュニケーションしたり、先回りして予約を再手配したりするなど、トラベルマネジメント会社が最前線に立って対応することを求められている。その一環として、GBTでは多方面でのコミュニケーションをとる手法も策定済みだ」(サリー氏)。

サステナブルな業務渡航の実現に向けた新しい取り組みにも着手している。GBTは今年6月、シェル、アクセンチュアと共にサステナブル航空燃料(SAF)利用のプラットフォーム「Avelia」を立ち上げた。シェルがSAF生産者や航空会社をとりまとめる一方、GBTではSAFを購入して出張や会議に伴う排出ガスを削減したい顧客企業への対応を担当する。Aveliaのブロックチェーン上で、SAFの購入、出張での使用手配、利用状況のトレース、排出ガス削減を証明する認証などをやりとりする仕組みだ。

「GBTは顧客企業の出張データを持っているため、これベースに、サステナブルな出張体制の構築をサポートできる」とサリー氏は自社の強みを説明する。オーストラリアやシンガポールなどを中心に、既存顧客の間で、出張や会議の脱炭素化への関心は非常に高くなっているとも指摘。「多くのグローバル企業が、独自の脱炭素に関する目標を設定するようになったが、これを達成するためには、法人旅行会社からの支援も必要としている。GBTとシェルが提携することで、より直接的なサポートが可能になる」と話し、日本からも多くの企業が参画することに期待を示した。

航空燃料の他にも、サステナブルなホテルや会議場、エネルギーを選ぶ「グリーン調達」や、GBT経由で、Carbonfund.org Foundationなど複数のグローバルパートナーからカーボンオフセットを購入し、排出ガスの実質ゼロ化に役立てるなどのサポートにも力を入れている。クライアントの温室効果ガス排出量の目標設定、トラッキング、レポーティングを手伝い、戦略や意思決定に役立てていく方針だ。

グリーンなイベント開催のパートナーに

自社が開催する会議やイベントを、よりグリーンにすることについても、「積極的なコミットメントが間違いなく進んでいる」とラッシュ氏は話す。

「2023年グローバル会議イベント予測」調査結果によると、アジア太平洋地区の回答者の86%が「会議やイベントを計画するとき、サステナビリティを考慮する」、さらに83%は「すでにサステナブルなミーティング開催に関する戦略を明確に定めている」と回答。また多様性、公平性、インクルージョン(DE&I)への支持を、登壇するスピーカーやプログラム内容、取引先の選定などに反映させることについても、同92%が「積極的に取り組んでいる」と答えた。

ラッシュ氏は「会議やイベントのプログラムと、企業が掲げる理念や戦略に齟齬がないように徹底することが求められている」と話す。

こうした取り組みにおいて、最も重要なのは「適正な意志決定や選択ができること」と同氏。GBTでは、ミーティングやイベントの計画立案から開催後の目標達成度チェックまで、全サイクルを通じて、顧客企業への様々な支援ツールを提供。「まず開催ロケーションの選定。さらに飲食、プラスティック、水やエネルギーなどに関する対応。終了後には当初の目標に対する達成度のレポート作成まで、我々が支援する」(ラッシュ氏)。

同社が最近、クライアント企業向けに導入した排出ガス測定ソリューションに対しては、日本の顧客企業からも好反応を得ているという。こうしたテクノロジーの大半は、GBT社内で開発しているが、必要な技術を持つ企業を買収することも。こうした分野へには、引き続き、積極的に投資していく方針だ。

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