JTBの2024年3月期第2四半期の連結決算が発表された。売上高は、前年比32%増の5100億円、売上総利益は28%増の1182億円。営業利益は87億円(前年同期:47億円の赤字)、経常利益は120億円(同22億円の赤字)。純利益は、61億円(同29億円の赤字)となった。中間決算の営業利益は4年ぶりの黒字転換となった。
旅行事業は、世界規模での人流回復と国内でのコロナウイルス感染症の5類引き下げによる需要回復で、全セグメントで増収となった。売上総利益でみると、国内旅行は25%増の466億円(2019年同期:535億円)、海外旅行は489%増の183億円(同565億円)、訪日旅行は677%増の60億円(同93億円)、グローバル旅行は218%増の65億円(同91億円)。
決算会見では、代表取締役社長の山北栄二郎氏が、個人・団体ともに回復している国内旅行や、回復基調に乗った訪日旅行とグローバル旅行に対し、海外旅行は「本格的な回復は道半ば」の状態と説明。円安や現地の物価上昇の影響が大きい。年末年始のハワイや現実的な価格帯のアジアなどは回復傾向にあり、韓国は2019年比で70%超だという。今後の海外旅行市場は2024年でも80%~85%程度、本格回復は2025年になると考えている。
営業経費は売上高の上昇に伴い、前年より125億円増加したが、固定費は削減。人材の最適配置や店舗改革、スキルアップによる業務効率化などの構造改革が功を奏し、固定費は2019年比で273億円減となった。店舗は、重複していた店舗や人流の変わった場所の店舗などを再編したことで、2019年の480店舗から2023年には280店舗にまで減少している。
事業領域別の売上高は、ツーリズム事業が前年同期比31%増の3496億円、エリアソリューション事業が同31%増の419億円、ビジネスソリューション事業は同13%減の641億円。グローバル領域は217%増の798億円。ビジネスソリューション事業の減収は、企業向けコロナワクチン接種事業の減少が影響した。「コロナ対策に直接的に関係する事業はほぼ終息。観光支援や観光地開発のように地域のニーズに応えていく事業が大きくなっている」(山北氏)という。
2023年度の通期業績予想は、売上高は1兆1034億円、営業利益が134億円で、2023年5月に発表した数値から変更はない。
大型投資で、タビナカ強化へ
同社は、中間決算の発表と同時に、2023年度~2028年度に予定する計1200億円超の投資計画を発表した。内訳は、エリア開発(観光地の高付加価値化)と法人向けビジネス開発(MICE関連・その他)が610億円、DX・ITが450億円、店舗・設備等が160億円だ。
このうち、エリア開発では地域での滞在時間を伸ばし、消費を生み出す仕組みづくりを重視。観光地や宿泊施設での滞在やその周辺の周遊促進につながるインフラ開発、旅行コンテンツの拡充などで地域の魅力を高め、「結果として旅行者の実感価値向上と地域活性化を両輪で推進する」(山北氏)と説明した。
DX・ITでは、タビマエにおける情報提供や旅行予約、店舗での生成AIの活用、社内におけるBPR(ビジネスプロセス・リエンジニアリング)、事業パートナーの業務効率の改善などを推進。さらに、着地のDXとして、従来から進めている「ツーリズム・プラットフォーム・ゲートウェイ」を強化する。これは、アクティビティ予約や観光施設の入場券、MaaSで進めている周遊パスなど、タビナカのあらゆる情報をスマートフォンに乗せ、予約から体験実施がワンストップでできる仕組み。2025年の関西・大阪万博でも情報のプラットフォームの提供を予定しているという。
なお、中間決算の発表前には、青森市での入札案件における大手旅行会社5社による談合疑いが報じられていることに対して謝罪した。
山北氏は、2023年11月15日にJTB青森支店に公正取引員会の立ち入り検査が入ったことを説明。検査に全面協力するとともに、社内でも調査を進め、事実関係の把握に全力を尽くす考えを示した。「当社では、コンプライアンスと公正な取引を最重要ととらえ、最優先に取り組んできたが、このような事案が起きたことを厳粛に受け止め、心より反省し、改めて社内に徹底を図っていきたい」と話した。