日本の宿泊施設のBtoB決済を世界基準に、海外旅行会社との精算を効率化できる新ソリューションが、今後不可欠な理由を聞いてきた(PR)

日本の消費者の間ではキャッシュレス決済が拡大しているが、企業間の取引では、いまも現金決済が主流なのが現実だ。しかし、世界では法人決済においてもキャッシュレスがスタンダード。それは宿泊業界も例外ではない。日本の商習慣に根付く銀行経由の送金という手法はガラパゴス化しており、インバウンド送客の要となる海外OTAや旅行会社との取引には、決済と精算業務におけるグローバル化が急務となっている。

こうした日本の宿泊施設の法人決済の課題解決に立ち上がったのが、フィンテック企業のネットスターズ社だ。このほど、藤田観光の協力を得て、宿泊事業者向けのキャッシュレス決済プラットフォーム「StarPay-Biz for Hotel」を開発した。両社の責任者に、開発の経緯と現状の課題を聞いてきた。

日本の宿泊施設にVCN決済が必要な理由

ネットスターズは2009年、日本で創業した決済ゲートウェイおよびDXを手掛ける会社。2015年には、中国で普及していたQRコード決済サービスであるWeChatPayを日本に導入。QRコード決済を含む店舗向けのマルチキャッシュレス決済ソリューション「StarPay」を開発し、小売事業者や流通系事業者などに提供してきた。中国インバウンドの爆買い時代には訪日観光消費の拡大を支え、いまは国内・海外双方のキャッシュレス決済を提供する、キャッシュレス決済の先駆者である。2023年9月には、東証グロースに上場した。

その同社が開発した「StarPay-Biz」は、企業間の送金・受け取りの電子化・オンライン化と、請求や支払いの確認を簡素化することでコスト削減を実現する、BtoB向けキャッシュレスソリューション。今回、同社は藤田観光と協力して、このStarPay-Bizを宿泊施設のBtoB決済向けにカスタマイズした「StarPay-Biz for Hotel」を開発した。

StarPay-Biz for Hotelの特徴は、クレジットカード会社のバーチャルカード番号(VCN/法人カードの子番号)に対応したキャッシュレス決済ソリューションとしたこと。同社によると、VCNを使った請求・支払い業務に特化し、海外旅行会社と国内宿泊事業者をつなぐ決済プラットフォームを提供するサービスは、日本では初めてだという。

ネットスターズ決済事業部執行役員の滝島啓介氏は、開発した大きな3つの理由を説明した。1つ目は、インボイス制度や電子帳簿保存法改定を受け、国内企業における請求業務の電子化が進むのが必然であること。2つ目は、インバウンド回復が進む宿泊業界では、国際取引のさらなる増加が見込まれること。そして3つ目は、世界の旅行会社とホテルの決済手段がVCNによる支払いが一般的になっていることだ。

滝島氏は、特に3つ目の理由であるVCN決済について「日本では掛け売りの商習慣を前提とした取引が一般的であり、海外との法人決済でも銀行経由の海外送金が主流だが、海外の旅行業界ではVCNでの支払いがスタンダードになっている。日本での普及も求められている状態」と説明する。すでに約200カ国・地域で、VCN決済が利用されているという。

ネットスターズ決済事業部執行役員の滝島啓介氏

アドバイザー役として開発に協力した藤田観光は、日本の決済手法がグローバルスタンダードにあわなくなっていることに危機感があった。海外の旅行会社はこれまで、日本の宿泊事業者との決済手続きに通常とは異なる業務フローを用意していたが、この“特別待遇”への風当たりは強まっている。

藤田観光WHG事業部販売推進室レベニューチーム長の久保順広氏は「VCN決済ができないなら取引をしたくない、という海外の旅行会社の意思を感じる場面は実際にある。今後、インバウンドの扱いを拡大していくには販路である海外の旅行会社との新規取引を広げる必要があるが、そのためにはVCN対応が必須だと感じていた」と明かす。

久保氏によると、藤田観光では2010年ごろには海外の旅行会社からVCN決済の要望が聞かれるようになり、対処する術を探していた。しかし、宿泊事業者が単体でVCN決済に対応するには、VCNに対応した決済システムの開発に加え、カード情報の取り扱いに関するクレジットカード業界の厳格なセキュリティ基準(PCI DSS認定)を満たす必要があり、ハードルは非常に高い。

「認定を受けられる環境を整備するために時間も費用も掛かるうえ、セキュリティ環境を維持するランニングコストも大きい。ホテルには負担が大きすぎて、そう簡単に導入できるものではない」と、久保氏は説明する。複数のクレジットカード会社や決済代行会社にも話を持ち掛けたが、実現は難しいとの回答が続いたという。暗中模索するなか出会ったのが、決済会社としてグローバル決済に強みをもち、DX事業も展開するネットスターズと、そのBtoB向け決済サービス「StarPay-Biz」だった。

VCN決済の仕組みと、StarPay-Biz for Hotelでできること

では、VCN決済とはどのようなものか。なぜ、海外の旅行業界での利用が進んでいるのか。

VCNとは、企業間取引の決済で利用する法人向けクレジットカード(パーチェシングカード)を親番号として発行される、券面なしのカード番号のこと。VCNは発行数に制限はなく、利用分は親番号のパーチェシングカードに請求される。パーチェシングカードを持つ企業は、それぞれのVCNに対して利用制限や上限を設定できるので、自社で利用する対象や金額をコントロールできる。こうした特徴があることから、OTAや出張管理専門のトラベル・マネジメント・カンパニー(TMC)といった海外旅行会社が、ホテルとの決済を効率化する手段として、導入を進めている。

具体的に海外旅行会社と宿泊施設の、VCN決済の流れを見てみよう。

海外旅行会社は、自社に入ったホテルの予約にそれぞれ個別のVCNを付与し、予約情報とともに宿泊施設に提供。宿泊事業者は利用者のチェックアウト後、このVCNの番号で、予約に対する決済をおこなう。ここで従来の銀行振込と大きく異なるのは、VCNが発行された時点で、支払い主体が旅行会社からクレジットカード会社に移り、クレジットカード会社が支払いを保証することになる点だ。宿泊施設にとっては大きな課題であった売掛金の回収リスクが、ほぼなくなることになる。旅行会社にとっても、支払いのトータル金額を口座にいれておくだけでよく、手入力が必要な振込の手間がなくなる。

StarPay-Biz for Hotelの仕組み、イメージ

藤田観光の久保氏によると、宿泊事業者にとってはVCN対応によって決済システムをグローバル化することはもちろん重要だが、回収漏れを防ぎ、請求業務を効率化できることが、StarPay-Biz for Hotelに最も期待するところだという。

VCN決済では、銀行送金をする場合に必要だった請求書の作成・送付や入金管理、売掛金消込の業務がなくなり、入金がない時の督促も不要になる。さらに、StarPay-Biz for Hotelを介してVCN決済を扱うと、宿泊事業者は取引で発生する業務をウェブサイト上で一元管理できるため、従来の業務に比べて大幅な省力化が可能になる。「団体旅行が主流の時代であれば現行のやり方でもよかった。しかし、個人化が進んでいる今の時代は予約の総量は増え、その1つ1つの予約に各業務が付随し、負荷は増えるばかりだった。これらの業務が、VCN対応をすることでなくなる」と説明する。

特に最近は、宿泊予約に関するテクノロジーの進化や旅行者側のリテラシー向上により、予約の入り方が複雑化し、業務が煩雑になっている悩みもあった。例えば同じ宿泊客が3連泊する場合でも、各販路で安い料金を探した結果、1泊目はOTA経由、2泊目はリアルエージェント経由、3泊目はまた別のOTA経由といった具合に、細かく分けて予約する宿泊客も少なくない。久保氏によれば、そのような予約1つ1つの状況を把握して決済することや、経理上の齟齬が生じた場合の対応には、膨大な業務負荷がかかっていたという。

こうしたホテルの悩みを、StarPay-Biz for Hotelは一挙に解決できるのだ。

藤田観光WHG事業部販売推進室レベニューチーム長の久保順広氏

日本市場の底上げにも貢献

StarPay-Biz for Hotelホテルバージョンは約2カ月の試験運転を経て、2023年11月に本格稼働した。導入第1号の宿泊事業者は、もちろん藤田観光だ。

ネットスターズ滝島氏は、「技術力やスピード感には十分な自信があったが、我々が知ることができないホテルビジネスのリアルなノウハウや現場の事情を包み隠さず教えていただき、アドバイスを得られたことで、宿泊施設の実情に即して使いやすく、効果的なVCN決済のプラットフォームを開発できた」と自信を示す。今後も、同サービスを利用する宿泊事業者の声を大切にして、さらなる業務改善・省人化に資するサービスへとバージョンアップさせていきたい考えだ。

藤田観光の久保氏も「このプラットフォームを多くの事業者が導入することで、海外の旅行会社に対し、日本の宿泊施設もVCN決済が可能だという印象を広めていくことができる。これは、日本の宿泊業界にとってプラスであり、各事業者がビジネスチャンスを広げていく上で非常に大切なこと」と期待を寄せている。

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記事:トラベルボイス企画部

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