10月末のハロウィーンを前に、東京都渋谷区の長谷部健区長と新宿区の吉住健一区長が揃って、日本外国特派員協会(FCCJ)で記者会見し、来街者に向けて「ルールを守って過ごしてほしい」と呼びかけた。
渋谷区では2019年から、ハロウィーン期間中や年末年始の渋谷駅周辺での路上飲酒を条例で禁止。また、年間を通じて路上飲酒を禁止する改正条例を10月1日から施行した。
一方、新宿区は、6月から歌舞伎町1丁目の一部と新宿3丁目の一部で10月31日午後5時~11月1日午前5時まで、路上禁酒を禁止する条例を施行した。
長谷部渋谷区長によると、昨年はハロウィーン目的の来街を控えるメッセージを発したところ、ピーク時の来街者予想6万人を大幅に下回る約1万5000人になったという。また、約1年前は週末の渋谷センター街での路上飲酒者は1日当たり250人程度だったものの、この1年で1日710人程度に増加。しかし、10月1日の改正条例施行後は250人程度に減少していると話した。
昨年、ハロウィーン期間の渋谷区への来街者は減少した一方で、その人流が新宿区の歌舞伎町シネシティ広場に移動。狭いエリアにおよそ3000人が新たに流入したという。吉住新宿区長は、「夜が明けると、ゴミが散乱し、出勤してきた新宿区の職員が街の中にゴミを拾いに行ったという状況だった」と明かしたうえで、「自分の飲食をした後にゴミを残していくことは、教養のある理性のある人間が行うことではない。新宿は路上で飲酒することはお断りする」と強調した。
長谷部渋谷区長は、「オーバーツーリズムを防ぐためには、渋谷区の取り組みだけでは不十分。強力な措置が必要」として、今回、新宿区と共同で取り組みを進める背景を説明。そのうえで、ハロウィーン期間には、交通規制や鉄道改札の閉鎖、ゴミゼロ大作戦、バーチャル空間でのイベントなどを実施し、警察や公共交通機関、外郭団体、街の事業者と協力していく方針を示した。また、マナー違反行為の抑制や条例の周知を、海外メディアや空港など交通機関を通じて告知していく。
新宿区は、条例に基づいて、路上飲酒禁止区域の周辺での酒類の販売の自粛を要請するとともに、ハロウィーン当日は、区職員と警備員を合わせて約100人体制で、路上での飲酒や迷惑行為をやめるように呼びかける。
両区の条例には罰則規定はない。長谷部渋谷区長は、「マナー違反に対する罰則については、基礎自治体だけでは体制づくりは難しい。今後、東京都や国に対して率先して要請していく」と話したうえで、「渋谷と新宿の取り組みが他の観光地にも広がり、来街者と地域住民がともに楽しめる持続可能な都市を目指していきたい」と続けた。