全国旅行業協会(ANTA)会長の二階俊博氏が、2025年を迎えるにあたって年頭所感を発表した。
二階会長は2025年をコロナからの回復を実現した観光産業が、次のステップへ進むための一年と位置づけ、「観光事業者は地元行政、地域住民と同じ目標に向け、それぞれ知恵を出し合いながら、スクラムを組んで進んでいくことが肝要」と指摘。ANTAとして、持続可能な観光地域づくり、多様化する旅行ニーズへの対応、利益率の高い高付加価値商品の造成促進などの取り組みを通し、地域振興に貢献し、会員が存分に力を発揮できる環境を構築したいとの意欲を示した。
また、同氏はANTA会員に向けて「観光は平和産業。全国各地の元気を取り戻すべく一丸となり、我が国の観光産業が更なる飛躍を遂げる年となるよう、総力を挙げてともに奮起しよう」などと訴えた。
発表された内容は以下のとおり。原文のまま掲載する。
年頭所感
明けましておめでとうございます。新しい年を迎えるにあたり、ご挨拶を申し上げます。
旧年は、我が国の観光立国の実現に向けて大きな一歩を踏み出すことができた年となりました。日本を訪れる外国人観光客数は、コロナ前の2019年の水準を上回るとともに、国内観光も個人旅行を中心に活況を取り戻し始めました。他方で、日本人による海外旅行需要は依然として低迷しており、バランスのとれた国際交流が行えているとはいえない状況が続き、団体旅行もコロナ前の水準までの回復には至っておりません。また、サービス提供機関における人手不足やオーバーツーリズムなど、かねてより言及されていた課題が顕著となった年でもありました。
新たに迎える2025年は、コロナからの回復を実現した観光業界が次のステップへ進むための一年にしなければなりません。観光業は、国の基幹産業であり、地方創生の切り札であることは申し述べるまでもなく、持続的に成長し、社会をより豊かにしなければならないという責務を担っております。そのためには、地元行政、地域住民の皆様と同じ目標に向けて、それぞれ知恵を出し合いながら、スクラムを組んで進んでいくことが肝要です。本年は、観光を通して、社会がより一層明るくなるよう、皆様にはご尽力いただきたく存じます。
また、本年4月には、日本では愛知万博以来20年ぶりとなる大阪・関西万博がいよいよ開幕されます。今回の万博は、テーマである「SDGs達成への貢献」「Society5.0の実現」に向けて、世界の英知を結集した世界的にも注目度の高い国際イベントであり、国内外から数多くの旅行者が訪れます。観光業界に携わる皆様一人ひとりが観光大使となったつもりで、日本や関西の素晴らしさをアピールし、観光業界が飛躍するための起爆剤にしていただければと存じます。
当協会としても、持続可能な観光地域づくり、多様化する旅行ニーズへの対応、利益率の高い高付加価値商品の造成促進などの取組を通して、会員が存分に力を発揮できる環境を構築し、地域振興に貢献してまいります。
本年1月28日には東京都で「第19回国内観光活性化フォーラムin東京」を開催いたします。本フォーラムは、当協会47支部組織、全国のANTA会員並びに観光関係の皆様が一堂に会し、「ようこそまだ見ぬ東京へ」のスローガンのもと、開催地である東京都への送客を促進するとともに、国内旅行及び地域観光の更なる需要拡大を図ることを目的とした大会となります。本フォーラムが旅行業界の活性化を導く、実り大きな成果が上げられるよう、全力を尽くしてまいります。
さらに、日本人による海外旅行やインバウンドの国際往来につきましても、近隣諸国を中心に、より活発な交流が行われるよう取り組んでまいります。私はかねがね「観光は平和産業」と申し述べておりますが、国際交流が盛んになることで、お互いの国への理解が深まり、国民同士の絆が結ばれ、新たな観光需要が生み出されることとなります。観光での交流で得た絆は、不安定な社会情勢にも左右されがたい、国の宝であります。ANTA会員の皆様が先頭に立ち、多くの日本人が外国の文化に触れ、多くの外国人が日本の文化の素晴らしさを経験する機会を大いに創出していただきたく存じます。
観光が明るくなれば、世の中は必ず明るくなります。これまで培ってきた長年の経験と英知を結集して、全国各地の元気を取り戻すべくANTA会員一丸となり、我が国の観光産業が更なる飛躍を遂げる年となりますよう、総力を挙げて共に奮起してまいりましょう。
全国旅行業協会(ANTA)
会長 二階俊博