エクスペディア・グループのリテール日本統括ディレクター/代表取締役である木村奈津子氏が、2025年を迎えるにあたって年頭所感を発表した。
木村氏は、2025年は広告戦略などのブランド投資とパートナービジネスの成長をさらに加速すると明言。特に世界の中間層の3分の2を占めるようになると予測されるアジアの中間層は、所得の4分の1を旅行費用に充てる計画をし、しかも半数以上がラグジュアリーな旅を求めているという同社の調査結果から、エクスペディア・グループとしてアプローチを強化していく方針を示した。
また、トレンドとして、世界的にパリではなくランス、東京ではなく福岡といった「第2の旅行先」に注目が集まっていることを紹介し、今後、定番の観光地に加え、周辺の魅力的な目的地への需要増加を予測した。
発表された内容は以下のとおり。原文のまま掲載する。
2025年を迎えるにあたっての年頭あいさつ
謹んで新春のご挨拶を申し上げます。
2024年は、エクスペディア・グループ初の女性CEOとしてアリアン・ゴリンが就任し、新たなスタートを切りました。今年はコロナ中に整えたプラットフォームの技術革新を基盤として、再び活気を取り戻したグローバル旅行市場の需要を一機に取り込み、ビジネスを成長させることを目標に取り組んできました。その結果、エクスペディア・グループの主要ブランドであるエクスペディア、ホテルズドットコム(Hotels.com)、バーボ(Vrbo)の3つのプラットフォームには、全世界で毎日1000万人以上が訪れています。
2025年の展望:
ブランド投資とパートナービジネスの成長をさらに加速
昨年、エクスペディアブランドは新しいタグライン「いつものそとへ」を基軸に、海外旅行の魅力を広く伝える大規模な広告キャンペーンを展開しました。テレビや渋谷・新宿の交通広告、JR車両ジャック、ラジオ、デジタル広告、インフルエンサー活用といった包括的な施策を実施したことに加え、ネットフリックスとの初のグローバル広告パートナーシップを締結し、日本市場を皮切りに広告を展開しました。
2025年には、このようなブランド投資をさらに強化し、広告戦略を加速させることで、日本を含むアジアや中東といったアメリカ以外の市場でのプレゼンスを高めていく方針です。
また、旅行者に向けてはブランド価値の再定義と差別化を進め、各マーケットの多様なニーズに応える取り組みを強化します。エクスペディアでは、海外、国内旅行の空港券やダイナミックパッケージの訴求をさらに強化し、ホテルズドットコムでは「10泊で1泊ボーナス」というリワードプログラムを軸に、頻繁に国内外を旅する層へのアプローチを一層推進していきます。
さらに、ここ数年成長を続けるパートナービジネスでは、2023年度の収益が前年と比べて33%の驚異的な成長を記録しており、2022年の力強い成長にさらに上乗せする形となりました。2025年度は、より多くのパートナーと連携を強化していく考えです。実は、世界の旅行市場において主要オンライン旅行会社のシェアは15%にとどまり、2. 3兆ドル規模の旅行業界全体のごく一部を占めているに過ぎません。そのため、まだ成長の余地は十分にあります。未開拓の顧客層にリーチするためには、世界中の様々な旅行会社とパートナーシップを構築する取り組みが不可欠です。
ホテルパートナーへのテクノロジー投下を強化
旅行者にとって滞在先の選択は重要ですが、選択肢の多さから予約までに平均2か月以上(68日)も情報収集に費やしていることが当社の調査より明らかになっています。これほど長く時間をかけているにもかかわらず、実際に選ばれるのは検索結果上位の施設がほとんどで、エクスペディアとHotels.comでは上位20位以内の施設が全クリックの78%を占めています。
そこで、エクスペディア・グループでは、世界中のホテルパートナー様の様々な特徴や異なるターゲット顧客層に対応できる効果的なツールの開発を強化しています。集客効率を最大化するための最も効果的な方法は、各マーケットの検索結果で上位に表示されることです。現在では、「掲載順位向上ツール」と「TravelAds(リスティング広告)」の2つのツールを提供しており、どちらもホテルの売り上げアップに大きな効果を発揮しています。
「掲載順位向上ツール」は、広告料ではなく、宿泊課金型(pay-per-stay)の露出度ブースターです。ツールを実際に活用している施設様では、平均して20%の予約額増加が見られています。一方、「TravelAds(リスティング広告)」は、クリックベースの課金モデルでリスティング広告の形態を取り、施設様が求める検索条件に合わせて入札額を自動調整します。この機能により、購買意欲が高い旅行者へのアプローチが可能となります。「TravelAds(リスティング広告)」をすでに利用している施設様は、未掲載の施設様に比べ、最大120%の予約数増加を実現していることがわかっています。
注目の旅行トレンドとアジア中間層の台頭
旅行者の増加に伴い、旅行トレンドにも新たな動きが見られます。エクスペディア・グループの「2025年の世界の旅行トレンド」調査によれば、人気観光地に代わって、あまり知られておらず混雑していない「第二の旅行先」への関心が高まっています。調査結果では、世界の旅行者の約63%、日本の旅行者の48%がこのような「第二の旅行先」を訪れたいと回答しており、例えば、パリではなくランス、プーケットではなくクラビ、東京ではなく福岡といった新たな選択肢が注目されています。今後、定番の観光地に加え、その周辺の魅力的な目的地への需要が増加することが予想されます。
一方で、アジアの中間層人口は2023年までに35億人に達し、世界の中間層の3分の2を占めると予測されています。当社の調査によると、この層の旅行者は4分の1の所得を旅行費用に充てる計画をしており、半数以上が今年よりもラグジュアリーな旅を求め、全体の38%はビジネスやファーストクラスでの旅行を検索しています。このようなトレンドを受け、エクスペディア・グループでは、アジアの中間層に向けたアプローチをさらに強化していく方針です。
エクスペディア・グループを代表し、すべてのパートナー施設、政府機関、業界関係者の皆様に対し、昨年1年間の多大なるご支援とご協力に感謝を申し上げると共に、新しい年のご繁栄および皆様のご多幸をお祈り申し上げます。
エクスペディア・グループ
リテール日本統括ディレクター/代表取締役
木村奈津子