ポストコロナの観光復興に向け、中長期的な滞在者やリピーターの増加、地域コンテンツの創出が模索されるなか、復活のカギとして注目が高まっているのが、世界的に急拡大しているアドベンチャーツーリズムだ。
日本もアドベンチャーツーリズム業界最大の国際サミットを誘致。2021年9月20~24日には、「アドベンチャートラベル・ワールドサミット(ATWS)北海道」がバーチャル開催される。なぜ、いまアドベンチャーツーリズムなのか。トラベルボイスは独自の調査レポート「アドベンチャーツーリズムの基礎と現状~定義から歴史、世界各国の取り組み事例など~」を発表。その概要をまとめた。
アドベンチャーツーリズム=アウトドア体験、ではない
まず、アドベンチャーツーリズムと聞いて、みなさんは何を連想するだろう。実はアドベンチャーツーリズムは単なる「アウトドア体験」ではない。アドベンチャーツーリズムの国際機関であるアドベンチャー・トラベル・トレード・アソシエーション(ATTA)は、アドベンチャーツーリズムを「自然」「アクティビティ」「異文化」の要素のうち、2つ以上で構成される旅行・観光と定義している。
類型的には、「ソフト」「ハード」「専門」の3つがあり、教育体験や異文化体験、ヨガなど幅広いアクティビティが定義に含まれる。また、アドベンチャーツーリズムの概念で重要な点が、観光による経済効果だけでなく、産業の多様化を結びつける役割があり、自然の枯渇、地球温暖化による気候変動などの環境問題にも対応する視点があることだ。
世界で約75兆円の巨大マーケット
欧米中心に発展したアドベンチャーツーリズムだが、ATTAの試算によると、市場規模は2012年の2630億ドルから2017年には6830億ドル(約75.1兆円)と、平均成長率21%で拡大してきた。旅行者の特徴は、アウトギア(用具、装備)にこだわり、滞在期間も長い。今後は中国や東南アジアの中間層の拡大により、さらに伸びると想定されている。
また、マス型の一般的なバケーションパッケージと比べて、リケージ(Leakage)と呼ばれる域外への資金流失が少なく、地域内に残る資金が多いと言われているのも、近年、国・多くの地域が着目するようになった要因のひとつだ。
日本は世界ランク18位
日本も北海道が国際サミットを誘致したように、各地で取り組みが始まっているが、世界的にはどの国のアドベンチャーツーリズムが進んでいるのだろうか。
ATTAとジョージワシントン大学国際観光研究所が、国別の競争力を評価した「アドベンチャーツーリズム開発指標2020」によると、世界ランキングはアイスランドがトップでスイス、ニュージーランドが続く。日本はアジアで唯一トップ20にランクインしたとはいえ、18位にとどまっている状況だ。
たとえば、世界3位のニュージーランドは、ニュージーランド政府観光局が公式サイト上の「楽しむ」アクティビティの中で最も上位にアドベンチャーを位置づけ、さらに各アクティビティの予約動線を配備している。アクティビティはジェット・ボード、ロッククライミングなどのハード系が人気で、オーストラリアやイギリス、アメリカの若年層の取り込みに成功している。
ポストコロナの復活のカギとして期待されるアドベンチャーツーリズム。日本ではまだまだ開拓の余地が大きいため、その市場規模や各国の事例を概観することで、今後の戦略に向けて学びたい。
このほか、アドベンチャーツーリズムに関わる組織や団体、事例をまとめたレポートは以下からダウンロードできる。