星野リゾートは2022年4月13日に開催したプレス向け発表会で、アフターコロナに向け、6つの小市場をターゲットとするマーケティング戦略を発表した。星野リゾートとして初となるポイント会員プログラムやサブスクリプション(定額)サービスをはじめ、各市場に対応した施策を導入する。
6つの小市場とは、(1)北海道(セイコマート会員向け優待施策)、(2)ビジネス需要、(3)新市場創造、(4)シニア(70歳以上)、(5)若者層、(6)愛犬家。例えば(2)ビジネス需要では、都市観光ホテルブランド「OMO by 星野リゾート」で宿泊代金の5%をポイントで加算し、同社の宿泊ギフト券への交換を可能にした「OMOポイント」を開始。また、ワーケーションやテレワーク需要を踏まえ、会議利用に対応できる完全個室型のワークルームも設置する。ビジネスの宿泊客向けの環境を整えることで、「貯まったポイントで家族や友人などとの旅行をしていただく。それをバックアップできるリゾート施設があるのが強み」(代表の星野佳路氏)と、ビジネス需要から発生する旅行の獲得も視野に入れる。
さらに、5月1日からオフィス運営WeWorkとも連携を開始。OMO宿泊客はWeWorkの共用エリアの利用可能に、WeWork会員はOMOのワークルームを2時間無料で利用可能とする。両社の顧客にとって、移動先でのワーキングプレイスの選択肢が増えることになる。将来的には、インバウンドの回復時を見据え、世界150都市に展開するWeWorkの会員に星野リゾートの宿泊の割引提供も検討しているという。
また、(3)新市場創造では、旅のサブスクサービス「HafH」を運営するKabuK Styleと資本業務提携を締結し、OMOとBEBを同サービスの予約対象とした。(4)シニア(70歳以上)には、年間12泊分を温泉旅館ブランド「界」の好きな施設で滞在可能とする「温泉めぐり 界の定期券」を、100組限定(1名30万円~)で販売。体力的な不安よりも旅の阻害要因となりえる旅の計画・手配の煩わしさを排除し、旅に出かける後押しとする。
このほか(6)の愛犬家では、ある外部調査で回答者の約3割の人がコロナ禍でペットを飼い始めて旅行の頻度が減少したという結果を踏まえ、愛犬と泊まれる施設を現在の9施設から46施設に順次拡大するという。
コロナ禍に運営施設が拡大
こうした新施策を実施する背景には、星野リゾートの運営施設の拡大がある。例えば北海道ではWBFの再生案件を含めると、運営規模が2000室以上に拡大している。また、ポイント施策を導入するOMOは、星野氏が「OMOの急拡大に伴って導入した」と説明する通り、2021年に京都に3施設と沖縄那覇を開業。今年は北海道の2施設と東京赤坂の開業のほか、大阪や金沢での開業を控えており、この2年間で9施設を開業することになる。これによりOMOは合計11施設に拡大する計画だ。
OMO以外にも、今年は界で1月に開業したポロトを含め4施設(湯布院、出雲、雲仙)、BEBで1施設(沖縄瀬良垣)が新規開業する計画で、国内で計10施設を開業。星野リゾート全体の運営施設数は現在の56施設(2022年4月現在)から62施設に拡大する。
コロナ禍にも運営施設を伸ばしてきたことについて、星野氏は「危機の時こそ、運営会社の実力が問われている。オーナーの依頼に応え、再生していることが業績に反映されている」と自信を示した。すでに報道されているが、2022年3月30日にはグアムの「Onward Beach Resort Guam」(428室)の経営法人の株式を取得しており、海外での運営施設も計5施設に増加する。
都市観光や遠距離旅行に「キャンペーン必要」
また星野氏は、政府や自治体の需要喚起策にも言及。県民割・ブロック割に関しては「当社が取り組んできたマイクロツーリズムを政策面からサポートするもの。時期にあった政策だと思う」と歓迎する一方、その後の全国版(新GoTo)への展開では、「前回とは状況が全く異なる。前回の改善策ではなく、今の課題にあった内容にすべき」と要望した。
特に星野氏が指摘したのは、需要回復に地域格差があること。大都市圏の周辺エリアで回復が顕著だが、都市部や飛行機で行くような観光地には「何らかのキャンペーンが必要。宿泊施設より、飛行機利用に対する割引を厚くする方が需要回復の格差を減らすことになるのでは」と提案した。また、旅行代金の支援ではなく、「旅行に行ってもいいという明確なメッセージを出すことが大切」とも述べた。