サステナブル観光への意識調査2022、サステナブルな宿泊施設を選択した旅行者、世界では46%、日本は25%

ブッキング・ドットコムは、2022年版「サステナブルトラベル」レポートを発表した。旅行で利用する宿泊サービスや訪問先の選択において、サステナビリティを意識する傾向は高まっており、「サステナブルな旅は自分にとって重要」と回答した人は世界全体で81%、日本人回答者でも73%を占めた。一方、旅行者からは、サステナブルな施設かどうかの情報が分かりにくい、サステナブル=快適でないイメージなど、今後、さらに行動変容を促す上での課題も浮き彫りになった。

同調査は今年で7年目。今回は2022年2月、オンラインで実施、回答者は世界32各国・地域の3万人以上、うち日本人は1003人。18歳以上で、過去12カ月以内に少なくとも1回旅行しており、2022年も旅行する予定があること、旅行に関する意思決定をおこなう、または関与していることなどを回答者の条件とした。

今後12カ月以内の旅行で「よりサステナブルな旅を心がけたい」と回答した日本の旅行者では約半分の46%となり、2021年調査より4%増えた。ただし、世界全体での同回答シェアは前年比10%増の71%に達しており、その差はまだ大きい。そのきっかけとして、最も多かったのは、「気候変動に関する最近のニュース」で、日本は29%、世界全体では50%。「宿泊施設と現地までの交通手段を選ぶ際には、事業者のサステナブルな取り組みが大きく影響する」との回答も、世界全体では35%を占めたのに対し、日本は13%にとどまった。

交通機関や移動手段に関する質問でも、日本と世界での意識にはまだ乖離がある。「旅先での公共交通機関やレンタサイクルの選択肢を調べた」人は、世界全体では22%に対し、日本は12%。「環境への影響により、飛行機での移動を恥ずかしく感じる」は同30%と20%。なお、「長距離移動には、車ではなく鉄道を選ぶ」の回答は、日本も世界全体と同じく20%となった。

今後の旅行で交通手段を予約する際に、「サステナビリティ情報を積極的に確認する」と答えた人は世界全体で40%、「サステナブルな選択肢を積極的には探すことはしないが、すぐに閲覧できる情報があれば確認する」は54%だった。

「サステナブルな宿泊施設」への関心高く

宿泊施設についての質問では、「今後1年以内の旅行で、少なくとも一回はサステナブルな施設に滞在したい」との回答が、世界全体で78%に達した。さらに「過去1年以内に、サステナブルな宿泊施設を1回以上利用した」人は同46%(日本は25%)、その理由で最も多かったのは「環境負荷の低減に貢献したい」が41%(31%)、次いで「よりローカルな体験がしたい」が33%(26%)、「サステナブルな施設は、地域社会に貢献しているから」が31%(24%)だった。

発表資料より

これに対し、サステナブルな宿泊施設を利用しなかった旅行者が挙げた理由は、「そうした施設の存在を知らなかった」、「探し方が分からなかった」がいずれも世界全体で3割前後(31%と29%)。

一方、サステナブルな施設を「オンライン旅行サイトで過去1年以内に見たことがある」との回答は、世界全体で40%、日本では26%、「予約する前に、宿泊施設が取り組むサステナビリティ施策について、積極的に確認している」人は同38%(28%)だった。

また、宿泊施設のサステナビリティについて、全回答者の56%は「自ら積極的に探すことはしないが、簡単に閲覧できれば確認する」としており、具体的には、「サステナブル認定を受けている宿泊施設を絞り込む検索フィルター」(54%)などが挙がった。

同レポートでは、よりサステナブルに旅行する方法が分からない旅行者が多いのが現状であり、明瞭で分かりやすい情報提供が求められていると分析している。

具体的な行動につながる情報を

“サステナブルな旅”に対するネガティブな固定観念も根強いと同レポートでは指摘している。「サステナブルな旅の選択肢は増えているが、それ以外の方が魅力的に映る」と回答した人は全体の32%を占めたほか、「サステナブルな旅行には、休暇に求めるラグジュアリーや快適さがない」(27%)、「サステナブルなデスティネーションは、自分にとっては、他より魅力が劣る」(26%)などの見方も。こうしたイメージを覆し、嬉しい驚きを提供していくことも課題となっている。

パンデミックの影響などから、今までとは異なるニーズも顕著になっている。過去一年以内の旅行で、「ピークシーズン以外の時期を選んだ」人は世界全体で33%、密を避けるために「知名度が比較的、低い旅先を選択した」のは同27%。さらに今後12カ月以内の旅行について、「混雑緩和や観光需要の分散を促すため」に、「オフピークまたはオフ期のみにする」と答えた人は40%、「人気観光地や人気施設を避ける」は64%にのぼった。

だが同時に、全回答者の3分の1以上は「比較的混雑していなくて、魅力的なデスティネーションを見つけるのに苦労している」(42%)、「都市や人気観光地でサステナブルな選択肢を見つけることは不可能だ」(34%)とも感じていることが明らかになった。

現地の文化体験や地域コミュニティとの交流を通じて、地域社会に還元したいとの想いも強くなっている。「現地の文化を代表するような本物の体験」を求めているとの回答は全体の66%、「自分が訪れたことが、現地側にとってもプラスになること」は59%となった。

反面、34%の人は「どこで、どのように地域に還元できるツアーや体験アクティビティを探せばよいのか分からない」、32%は、「地域に還元できるような過ごし方や訪問先を、旅行会社に提案してほしい」と回答。同レポートでは、具体的な行動につながるような情報発信が重要になるとしている。

ブッキング・ドットコムでは、グローバルOTAでは初めて「気候変動への対策計画」を策定、2040年までに排出量ネットゼロ達成を目標に掲げている。また、宿泊施設と旅行者、双方にとってサステナブルな旅行がより手軽な選択肢となるよう、2021年から該当する宿泊施設を認定し、「サステナブル・トラベル」バッジを付与する制度を開始しており、現在、世界10万件以上が同バッジを獲得している。

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