米国のバケーションレンタル業界は、多くの都市が短期宿泊レンタル(STR:short-term rental/民泊)への規制を制定するのを阻止するために、議員へのロビー活動を強めている。バケーションレンタル分析会社「KeyData」によると、2024年には北米の主要30都市のうち17都市でSTRの供給の伸びが鈍化する見込みだ。
ニューヨーク、ロサンゼルス、モントリオールなど北米の多くの都市では、STRによる民泊によって住宅価格が高騰し、生活の質が損なわれているという住民の苦情が増えている。
OTAエクスペディアの政府関係担当シニアディレクター、リチャード・デ・サム・ラザロ氏は「我々は地元の議員と協力して、彼らの優先事項を理解することを強く望んでいる。それは、州法の安定性と一貫性を保つことにもなる」と話す。
バケーションレンタルを追跡するデータプラットフォーム「Inside Airbnb」を設立した住宅活動家のマレー・コックス氏は「多くの都市で、STRは住宅に悪影響を及ぼしており、規制されるべきだ」と話す。
STR分析会社「エアDNA」によると、ニューヨーク市で短期レンタルを制限する法案が2023年9月に施行されて以降、30日未満のSTR物件は54%減少しているという。
同社チーフエコノミスト、ジェイミー・レーン氏によると、カナダ・ブリティッシュコロンビア州(BC州)内の65の地域で短期賃貸(民泊)を主な居住地に限定する規制が可決されてから1か月後、供給は9.4%減少したものの、州内の1日当たりのホテル料金は9%上昇した。
ロビー活動費、OTA2社は増額、エアビーは減額
2024年上半期、バケーションレンタルのプラットフォームは、フロリダ、コロラド、アリゾナなどの州で取り組みを強化するために、ロビー活動に計140万ドル(約2億円)を投じた。これは、前年同期比で13%も多い。
エクスペディアはロビー活動費を前年比58%増の38万ドル(約5600万円)に増やし、アリゾナ州の議員と協力して、地方自治体が民泊を全面禁止することを禁じる法案の策定に成功した。ブッキング・ホールディングスは、ロビー活動の支出を61%増の57万ドル(約8380万円)に増やした。
一方、エアビーアンドビーの2024年上半期のロビー活動費は29%減の47万ドル(約6900万円)。同社は世界展開に注力しているため、通年の支出は2023年の103万ドル(約1.5億円)と大きく変わらないと見られている。
エアビーアンドビーでは、売上高上位200の市場のうち80%ですでに規制が実施されている。アクティブな物件の掲載数は減少しているが、同社では「これは質の低い物件の排除に向けた取り組みによるもの」だとしている。
※ドル円換算は1ドル147円でトラベルボイス編集部が算出
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