ツーリズムEXPO2024が始まる、「旅の価値」を新たなカタチに、俳優・山口智子さんもブースをめぐった初日を取材した

「ツーリズムEXPOジャパン(TEJ)2024」が2024年9月26日、東京ビッグサイトで開幕した。9月29日までの4日間、観光に関する多方面のキーパーソンが登壇するシンポジウムやセミナー、展示会、商談会が開催され、4日間で計18万名の来場を見込む。

開会式では、TEJ組織委員長の菰田正信氏(日本観光振興協会会長)が、令和6年能登半島地震からの復興の最中である能登半島で、先日、豪雨災害が発生したことにお見舞いを述べ、「観光業界が一丸となって、復興支援に取り組んでいく」と力をこめた。一般日には、北陸の物産展を開催する。

回復が遅れる日本発の海外旅行だが、今年のTEJの展示では海外からの出展者が全体の4割を超え、国内旅行の出展数を上回った。これに菰田氏は「日本の海外旅行市場への期待の高まりを実感している。TEJを契機に、さらに活性化されることを期待している」と話した。

TEJ組織委員長の菰田正信氏(日本観光振興協会会長)

今年も岸田文雄首相が、ビデオメッセージを寄せた。岸田首相は現在、訪日外国人旅行者数が過去最高を大きく上回る推移をしていることに触れ、「観光の恩恵が全国に行き渡り、自然や文化の保全と観光との両立が図られるよう、地方への誘客促進とオーバーツーリズムの未然防止に取り組む。『住んでよし、訪れてよし、受け入れてよし』の持続可能な観光地づくりと観光産業の生産性・収益性向上を実現する」と話した。

内閣総理大臣の岸田文雄氏がビデオメッセージを寄せた

今年のTEJのテーマは「旅、それは新たな価値との遭遇」。

会場では各プログラムで、様々な新しい旅のカタチが議論され、展示で示されている。主催者会見で日本旅行業協会(JATA)の髙橋広行氏は、海外旅行の回復の遅れに対し「世界の環境が大きく変わり、旅行者の意識も変容している中、今までの延長で復活するとは思っていない。海外旅行はリメイクが求められている」と主張。観光産業が為替の変動に左右されない、価格よりも価値が評価される旅行商品を打ち出していくことが重要であり、「時代にあった海外旅行をどう打ち出すか。新たな旅のカタチへと作り直し、マーケットにアピールすることが必要」と、今年のTEJの意義を強調した。

中央)日本旅行業協会(JATA)の髙橋広行氏

オーバーツーリズムから若者の確保まで、課題は世界共通

「観光交流人口の拡大」をテーマにした基調パネルディスカッションでも、新たな観光のカタチが議論された。

パネリストの1人で、山梨県小菅村など小さな町や村で「村まるごとホテル」などを展開する、さとゆめ社代表取締役の嶋田俊平氏は「地域の課題が観光資源になる。解決しようとする地域の人々の姿やストーリーが、地域外の人々を感動させ、『そこに参加したい』と思われるようになる」と話し、人を動かす「旅のチカラ」の有効性を示した。

また、新たな観光のカタチの議論には、観光が直面する課題も話題に上がった。ヨーロッパ観光委員会(ETC)エグゼクティブディレクターのエデュアルド・サンタンデール氏は、オーバーツーリズムについて「今や欧州だけでなく、北米の国立公園や日本を含むアジア、アフリカにもある」と、世界の課題となっていることに言及。その対応は不可避だが、例えば「最適なキャパシティはどのように計測するのか。地方のインフラに対する測定方法を考えなければならない」など、様々な角度での検討が必要であることも強調した。

基調パネルディスカッションの様子

9カ国と4つの観光関連組織の観光大臣やキーパーソンが参集したTEJ観光大臣会合では、各国・組織の課題認識から観光の取り組みまで話された。印象的だったのは、日本のように少子高齢化が進む国から、平均年齢27歳のウズベキスタンまで、多くの登壇者が、観光の再構築を求め、「いかに若者を観光に取り込んでいくか」に言及していたこと。

旅行者としてはもちろん、新たな観光を作るうえで「既成概念にとらわれず、新しい環境にフィットする若い世代を、再生型観光の担い手としていかに開発に参加してもらうか」(ブルネイ・ダルサラーム国一次資源・観光省大臣のダト・アブドゥル・マナフ・メツシン氏)など、新しい観光を作るうえで、若い世代に期待するところは大きい。

TEJ観光大臣会合の様子

海外バイヤーの注目「熱い」 -VISIT JAPAN トラベル&MICEマート

TEJと同時開催している、訪日旅行の商談会「VISIT JAPAN トラベル&MICEマート(VJTM)」も盛況だ。海外バイヤーは280社、国内セラーは300社・団体が参加し、8000件の商談がおこなわれる。

日本政府観光局(JNTO)理事長の蒲生篤実氏は「海外バイヤーの温度(商談に対する熱意)は非常に熱い。参加を取りやめたバイヤーがいても、その枠がすぐに埋まる」と話し、訪日旅行に対する需要の強さをうかがわせた。

今年の参加数は、コロナ前の2019年に大阪で開催されたVJTMの参加数(バイヤー326社/セラー366団体・社)に迫る勢い。昨年と比較してバイヤーが増えているのは、北欧地域の7社(昨年は4社)、タイ市場の32社(昨年は18社)。JNTOでは、他市場と比較して回復が遅れているタイ市場に特に注力しているところだという。

また、商談後に実施するファムトリップでは、東日本エリアを中心に企画。「体験型」を重視し、伝統工芸などの文化体験からラフティングなどの自然体験まで「アドベンチャーツーリズムのきっかけになるようなものを提案した」(蒲生氏)。

商談会の様子。バイヤーが着席するブースにセラーが訪れる形式で商談

スペシャルサポーター山口智子さん「人生の感動は、旅から」

主催者会見の最後には、TEJのスペシャルサポーターを務める山口智子さんが登壇。自負する旅に対する思いと魅力を話した。

山口さんは俳優業をセーブしていた時期、旅を繰り返す日々を過ごし、2010年から約10年間、世界各国でその土地の暮らしに育まれた音楽やダンスなどの文化を、映像に収めるプロジェクトを続けてきた。

訪れた国は約30カ国。山口さんは「人生における感動は、ほとんど旅から得たといっても過言ではない。世界は出会うべき輝きに満ちていると、旅に出る都度、痛感させられる」と語った。

一方で「世界には問題はある。理不尽なことはある」ものの、「まずは『知ろう』という思いが大事。長年連れ添った夫婦も、知ることがなければ愛は始まらなかった。知ろうとすることは、愛への一歩。知らなかった国・文化を知ることで、世界が良い方向に変わる一歩につながるのではないか」と話し、旅で世界を体感することを呼び掛けた。

山口智子さん。会見後、山口さんは実際にTEJの展示ブースをめぐり、次の旅の情報収集をおこなった

以下は、展示会の初日(業界日)の様子。TEJでは、会場内を撮影した数多くの画像を公式サイトで公開している。

欧州は、ETCが昨年の倍の小間数に拡大。イタリアやスペインなどの独立ブースも。ギリシャは10年ぶりの出展

米国エリアもスペースを拡大。グレーターマイアミ観光局は初出展

北海道のブースは大型ビジョンとデザインにもなっているサケ箱はリユースし、ごみを出さないサステナブルMICEを提案

JALのブースアイコンはMLB大谷翔平選手

特別企画のコーナーでは、JTB、Booking.com、楽天トラベルがサステナブルツーリズムを伝える共同ブースを出展

ツーリズムEXPO 写真ギャラリー(2024年度)

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