消費者庁が公表した報告書で、若者は他の年齢層よりもイベントや体験で参加者の一体感や、「その時・その場でしか得られない」といったことを重視していることが明らかになった。消費者庁の報告書「2021年度消費者政策の実施の状況」の中から、「消費者意識基本調査」(2021年度)などから分析した「若者の意識とコミュニケーション」について抜粋する。
まず、「消費者基本調査」で「現在の生活にどの程度満足しているか」を聞いたところ、若者の約8割から9割は現在の生活に満足し、半数が生活の程度を「中の中」ととらえている。「中の上以上」と回答した人の割合は、10歳代後半で約4割、20歳代で約2割だった。
観光産業にとって注目すべき点が、イベントや体験での参加者同士の一体感に対する考え方だ。「一体感が大事だ」との問いに「当てはまる」と回答した人の割合は、10歳代後半で約5割、20歳代で約4割となっており、全体の約3割に比べて高い。体験自体の再現性に対する考え方についても、「その時・その場でしか得られない体験をしたい」に「当てはまる」と回答した人の割合は、10歳代後半、20歳代ともに約6割に上った。一方で、コロナ禍で閉塞感を感じている若者も多く、若者の地域との付き合いが減少している調査結果も出ている。
若者は他の年齢層に比べ、「周りの人から注目されたい」、「自身について発信したい」、「発信したものに反応がほしい」との意識も高いようだ。ただ、内閣府の「子供・若者の意識に関する調査」で13歳から29歳までの男女に、自分の考えをはっきり相手に伝えることができる」のか聞いたところ、「あてはまらない」との回答も5割だった。
消費者基本調査でも、若者のSNS利用率は高く、他の年齢層よりも長時間利用している一方で、情報の公開、発信は注意深くおこなっていることが浮き彫りに。「SNSの利用に関する意識」について聞いたところ、10歳代後半、20歳代の「公開する個人情報や設定に気を付けている」は6割、「炎上しないように、発信する際は常に気を付けている」も3割を超えた。
こうした調査結果を受け、消費者庁は「現在の若者はほとんどがスマホを保有している。デジタルプラットフォームでの商品やサービスの購入、SNSでの利用など、幅広い用途で利用する一方、地域とのつながりの希薄化や新型コロナウイルスの感染拡大の影響による人との接触機会の減少によって、孤独・孤立が一層顕在化した」と指摘。
観光産業でも若年層に対しては、調査を考慮したアプローチが求められそうだ。