ニューヨーク市、「民泊」の事実上の禁止法、その影響と、勝ち組となるホテルとは?【外電】

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ニューヨーク市の短期レンタル規制(いわゆる民泊規制)によって、2023年9月5日以降、市内にあるエアビーアンドビー(Airbnb)の稼働物件2万3000軒のうち最大70%が削減される可能性がある。この措置がホテルにどのような影響を与えるかについては専門家の意見が分かれており、その予測は難しい。

価格比較サイト「カヤック(KAYAK)」によると、すでにクリスマス休暇(12月15日~1月2日)中のニューヨーク市のホテル検索数は前年比11%増加し、ホテル価格は平均約5%上昇しているという。

2023年8月8日、短期レンタル型宿泊(short-term rentals:STR)、いわゆる民泊を「事実上の禁止」する法案に対し、ニューヨーク州裁判所はエアビーの不服申し立てを棄却した。新しい規則は、エアビーに限らず、すべての予約サイトとアプリが対象。未登録の短期賃貸物件の支払い処理を禁止するもの。エアビーは、ニューヨーク市で最大のシェアを持っているが、そのリスティングを取り締まらないことで多くの批判を受けている。

バーンスタイン・リサーチのマネジングディレクターであるリチャード・クラーク氏は、「エアビーの成長は、需要拡大よりもホテルの価格設定にはるかに大きな影響を与えてきた」と述べている。たとえば、通常は1泊あたり300ドルのホテルでは、エアビーが登場する前のピーク時は1200ドルにも跳ね上がったが、現在はエアビーがより安価な部屋を提供し、需要を吸い上げているため、800ドルほどにとどまるとも言われている。

そのため、クラーク氏は、エアビーの物件が少なくなると、「ホテルは、大きなイベントがある日などで、その価格決定力が再び強まり、価格が急騰する」と予想している。

一方で、「ニューヨークは非常に大きな市場であり、エアビーの供給が多少減少しても影響は出ないだろう」と話すのはCBREのニューヨーク事務所ディレクター、エドワード・エシュマン氏だ。

規制の中で、ホストが別の方法で物件を掲載する可能性もある。ボストン大学ホスピタリティ管理大学院のホスピタリティ・マーケティング准教授で研究部長のマカランド・モディ氏は、「エアビーは不適格な宿泊施設のカレンダーをオフにすると言っているが、実際にオフにするのか、そしてどの程度までオフにするのか疑問だ。一般的に、ニューヨークのような大きな市場では、ホスト、特にプロのホストが回避策を見つけるのではないか」と見ている。

高級ホテルには影響なし?

エアビーの物件が減ることで、どのホテルが最大の利益を得る可能性があるかは不透明だ。ビジネス旅行者を中心とした高級ホテルは、おそらく最も影響が少ないだろう。彼らは、レジャー旅行者よりも価格をあまり意識せず、 ホテルのロイヤルティ・プログラムでポイント獲得を狙っている。このため、レジャー旅行の顧客に重点を置いているホテルが最大の利益を得る可能性があることになる。

ニューヨーク市の規制が始まっても、宿泊客は、近郊のニュージャージー州、コネチカット州、ニューヨーク州の一部を代替の滞在先として検討することができる。バーンスタイン・リサーチのクラーク氏は「隣接する州でのエアビーの業績が伸びるのではないか」と話している。

※編集部注:この記事は、米・観光専門ニュースメディア「スキフト(skift)」から届いた英文記事を、同社との正式な提携に基づいてトラベルボイス編集部が日本語翻訳・編集したものです。

オリジナル記事: Airbnb’s Impact on NYC Hotels: Winners, Losers, and Dueling Forecasts of New Law

著者:Sean O'Neill氏

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