富山県は、令和6年能登半島地震による風評被害や旅行自粛の払拭を目的に、宿泊客を対象にした「応援クーポン」を配布する。すでに政府が、国と北陸4県による旅行割引「北陸応援割」の実施を表明しているが、さらに県独自の施策として実施することを決めた。
県は、地震への緊急対応を目的にした富山県の2023年度2月の補正予算で、北陸応援割と応援クーポンをあわせて「北陸・富山応援事業」とし、13億円を計上。観光産業が他の産業にも波及するすそ野の広い産業であるとし、北陸応援割や応援クーポンを実施することで、宿泊施設や観光関連事業者全体の需要喚起に取り組んでいく方針だ。
応援クーポンは、対象宿泊施設を1万円以上で利用する旅行者を対象に、北陸応援割開始前は1人3000円、北陸応援割開始後は1人1000円を電子クーポンで配布する。2月中旬からゴールデンウィーク前まで、予算額に達するまで実施する計画。
観光は通常通り営業、正確な情報発信も
富山県によると、県内の宿泊施設や交通機関、観光施設は一部を除き、ほぼ通常通りに営業している。ただし、県内の宿泊施設では地震発生後の宿泊キャンセルは1月23日の段階で約2万2000件にのぼり、日帰りや宴会への影響を含んだ損失額は約5憶2000万円に及ぶという。(富山県ホテル旅館生活衛生同業組合が公表)
また、2024年から旅行会社が提供する旅行商品に限定して一般開放する新コンテンツ「黒部宇奈月キャニオンルート」では、同ルートで利用する黒部峡谷鉄道の鐘釣橋が地震の影響とみられる落石で損傷した。これを受け、旅行商品の販売開始は当初予定していた1月29日から延期し、2024年の黒部峡谷トロッコ電車の全線開通時期の発表後に開始する予定とした。同ルートの旅行開始日は予定通り6月30日としているが、同電車の全線開通時期に応じて判断する。
こうした状況の中、富山県はすでに1月から、当初予定していたプロモーションは基本的に実施する方針で対応してきた。例えば1月のJR首都圏駅での観光物産展も、県産品の販売を通した事業者支援や、観光関連の正確な情報発信の機会ととらえて開催した。1月下旬に東京駅で開催した観光物産展では、県内の被害情報や復旧・復興に向けた対応といった最新情報をパネルで掲出したところ、多くの人が関心を寄せるとともに、応援の言葉もかけられたという。
一方、北陸三県連携での観光PRは、石川県内の被災状況を踏まえて延期しているものもあるが、再開のタイミングを協議していくことで一致している。北陸新幹線の延伸開業やキャニオンルートの開始、2024年10月から予定されているJRグループのデスティネーションキャンペーンなどの効果を最大限発揮できるよう、県内の市町村や観光事業者・団体、民間企業等と連携して、取り組んでいく方針だ。