JTBの2023年度3月期第2四半期の連結決算は、売上高が前年比115%増の3863億円に倍増し、営業損益は前年から284億円改善した。売上総利益は75%増の923億円、営業損益は47億円の赤字(前期331億円の赤字)、経常損益は22億円(同260億円の赤字)。純損益は、前年の本社ビル売却等による特別利益311億円の反動で、29億円の赤字(同67億円の黒字)となった。
この結果に、代表取締役社長の山北栄二郎氏は「業績は大幅に改善している」と手ごたえを示した。その要因として(1)国内旅行の回復、(2)MICEやBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)など旅行以外のビジネスの拡大、(3)構造改革効果による経費増加の抑制の3つが、「業績回復のドライバーになった」と話した。
通期予想は、当初の想定より全国旅行支援や入国の規制緩和が遅くなったことを受け、売上高は計画を若干下回るとみるが、3つの業績回復要素により、営業利益は当初計画の63億円を達し、最終益も黒字を見込む。利益水準は、コロナ以前の2019年度(営業利益14億円、経常利益25億円、当期純利益16億円)を上回る見通しだという。
上期の業績概要:国内旅行とグローバルMICE、BPOが好調
旅行事業では、国内旅行は行動制限の緩和による人流が戻り、売上総利益も131%増の373億円と回復基調に乗った。個人旅行(90億円/前年比282%増)のみならず、修学旅行をはじめとする団体旅行(38億円/74%増)も上向いた。これに対し、海外、訪日、グローバル旅行は「依然として需要回復が遅れ、コロナ以前の2019年比では厳しい状況」(山北氏)。特に訪日旅行と海外旅行は「水際対策による制約の影響」との認識だ。海外旅行の売上総利益は31億円(2019年実績:565億円)、訪日旅行は8億円(同93億円)、グローバル旅行は21億円(同91億円)にとどまった。
旅行以外の事業の売上総利益は57%増の490億円。このうち、MICEとBPOが88%増の378億円と大幅に増加した。MICEは「拡大する国内外の会議、イベント需要を獲得できた」(山北氏)と評価。特にグローバルでは米国本土・ハワイでMICEを展開する子会社のMC&A社が、一足早く人流が回復した欧米市場を積極的に取り込み、過去最高を記録した。2022年6月には米国企業から、5000名規模のイベントを請け負ったという。
BPOはコロナ関連のワクチン接種や療養施設の運営、観光関連施策の事務局などに加え、企業や行政の通常のプロセス支援やシステム提供などの案件も広がった。これにより、売上高で比較すると旅行事業は1906億円、旅行以外の事業は1957億円となり、ほぼ拮抗する形となった。
構造改革による経費増加の抑制効果については、売上高が2020年度からの3年間で約3倍に拡大したのに対し、営業経費は7%減の969億円に縮小。コロナ前の2019年度(1413億円)比では444億円の改善となった。
山北氏は構造改革の進捗について、要員数の削減は想定を少し上回っているものの、営業に影響を与えない範囲であることを強調。今後は、「これで一段落。極端に踏み込むことはない」としつつ、「経営効率を高めるうえで取り組むべき項目」とし、状況に応じて対応していく考えを示した。
このほか、国内グループ会社を2019年の33社から21社へ集約。海外グループは2022年度中間時点で447拠点から187拠点へ削減した。店舗数は154店舗減、人員は約1万人減、テレワーク導入によるオフィス集約などを実施している。
今後の見通し:第8波の影響、訪日・海外旅行の動向や展開など
山北氏は黒字化を見込む下期の見通しについて、国内旅行は2019年度を上回る推移を予測。コロナ第8波についても、基本的に計画に織り込んでいると説明した。さらに上振れる可能性として、全国旅行支援の延長が実現した場合に加え、訪日旅行も「水際の大幅緩和以降、予約や問いあわせが非常に強く、さらに上昇する可能性がある」と見る。特に「欧米の勢いが強い。円安の影響もあり、消費単価が上がる傾向にある」という。
一方で、海外旅行については、今後も円安や海外の物価高、地政学的リスクなど「難しい要素が加わっている」とし、回復の足取りが鈍いことを明かした。旅行価格も2~4割程度上がっており、価格にこだわらない客層やハネムーンなど明確な目的のある旅行の比重が大きいという。
ただし、現在も「需要の強さは感じている。一定程度は少しずつ回復する」とも見る。今後は、需要に応じて航空座席の供給量が現在の状況(コロナ以前の4割程度)から回復するにつれて「価格も柔軟になる」と予想。供給量や価格、需要がコロナ前の水準に回復するには「2、3年かかる」と展望した。
この傾向のなか、海外旅行では(1)ダイナミックパッケージでの自由度の高い商品展開を重視する一方、(2)企画性の高いエスコート型商品、(3)富裕層を中心とする高額商品にも力を入れ、3つの柱で対応していく方針。特に(2)エスコート型商品については、マーケットセグメントに対応した商品体系を整備する目的で、組織改編も視野に入れているという。
このほか、成長戦略ではグローバルMICE、観光地経営・DX、訪日インバウンドを重視。このうち、自治体やDMO、地域観光事業者の観光地経営・DXを支援するエリアソリューションは、中間決算で売上高は25%増の320億円だったものの、営業損失10億円を計上し、赤字幅が倍増した。これについて山北氏は「先行投資で経費が膨らんでいる。中長期的には利益を支える事業になり、この数年のうちに黒字化の基調に乗ると思う」と説明した。