京都市観光協会、観光事業者の人手不足の実態調査、接客職で不足が顕著、限られた労働力での試行錯誤続く

京都市観光協会はこのほど、観光産業における人手不足についての臨時調査結果を発表した。外国人観光客の需要が急回復する一方で、観光産業ではこの数年間で多くの人材が離職、少子高齢化も相まった人手不足が顕在化し、サービス水準や労働環境の維持が難しくなることが懸念されている。

京都市の観光関連事業者を対象とした調査では、特に接客業の人手不足が顕著であるほか、経営者層が抱える賃金水準引き上げの課題、柔軟な働き方の優先、個人事業主への外注や業務自動化などの工夫がおこなわれていることも浮き彫りになった。

調査は2023年6月に実施。アンケートは152件、対面による聞き取りは13事業者から回答を得ている。

就職希望者少なく、離職者多く

まず、コロナ禍前からの従業員数の変動について尋ねたところ、「下回った」という回答は65.1%を占めた。事業者の業種は「旅行会社」、「文化芸能」、「交通」など多岐にわたるが、とりわけ「宿泊」、「飲食」では、「従業員が2割以上減った」と回答した事業者が4割を占めた。現在、人手不足を感じる事業者は71.3%。不足している職種や技能は「接客」が46%で最も多く、次いで「営業・渉外」(34%)、「調理」(22.7%)だった。

人手不足の理由については「就職希望者が少ない」(70%)、「離職者が多い」(42.7%)が多かった。一部事業者へのヒアリングでは、2025年大阪・関西万博の影響で大阪に人手が集中し、京都での不足がさらに深刻になるのではないかと予想する声もあった。

出典:京都市観光協会 観光業界における人手不足についての調査

出典:京都市観光協会 観光業界における人手不足についての調査

限られた労働力で試行錯誤続く

では、なぜ就職希望者が少なく、離職者が多いのか。

就職希望者が少ない理由は「賃金を上げる経営的な余裕がない」(40%)、「勤務時間などの制約がある」(34%)。離職者が多い理由も「長時間労働や休日出勤、夜勤」(30.7%)が最も多く、「賃金を上げる経営的な余裕がない」(26.7%)が続いたが、「将来のキャリアパスを描けない」(26.7%)という構造的な課題を感じている経営者も少なくなかった。

一方で、ヒアリングによると、「賃金水準の向上」について取り組んでいるにもかかわらず、就職希望者が集まらず苦労しているという声が多く聞かれた。同観光協会は「他業界でも賃上げが相次いでおり、業界間での競争が激しくなっている」などと分析している。

人手不足の解消のためにこれから取り組みたいことについては、「賃金水準の向上」(32.7%)に続き、「ICTの導入などの業務効率化」(22.7%)、「外国人労働者の受入環境整備」(20%)なども挙がった。

出典:京都市観光協会 観光業界における人手不足についての調査

具体的には、限られた労働力のなかで経営を維持するために、部署の垣根を越えた連携や、職員のマルチタスク化に取り組んでいると回答する事業者が複数みられた。

また、多様な働き方ができるパートタイム労働の導入や、派遣社員の活用、クラウドソーシングサービスを活用した業務委託を効果的に組み合わせることで、労働力を確保している事例もあった。あえて受入れ客数を制限することで、従業員がサービス改善について考える余裕や、休暇を取得しやすい環境ができ、生産性の向上につながるケースがあることも確認されたという。

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